はじめに
以前、このような事がありました。
ある病院の医療相談室からの依頼で、民間救急車で転院搬送のお迎えに行きました。玄関にいた家族の方より、「○○のお迎えですか?私は、△△に介護タクシーを頼んでいる。貴社にはお願いしていない。」との事で断られました。帰社の途中、病院より連絡が入り「至急搬送を実施してほしい。戻って下さい。」患者様は、ベッド上安静で点滴と酸素投与を続けながらの搬送で看護師の付添いを要請され、民間救急車でないと対応は難しい患者様でした。介護タクシーは、ストレッチャーは乗せられない小型車で、車椅子のみの対応。酸素や点滴の対処が出来ない車両でした。又、看護師の同行は出来ない様子でした。
この事例の通り、一般の方は、寝台タクシー・福祉タクシー・介護タクシー・患者搬送車・民間救急などの内容は正確に理解されていません。これらは皆同じようなサービスと思われています。内容を簡単に整理すると、次のようになります。
種類 | 概要 | 運賃 | 対応 | 資格 |
---|---|---|---|---|
寝台タクシー | 寝たまま移動できるタクシー | メーター・設備料 | 1名 | 特になし |
福祉タクシー | 車椅子又は寝台が乗せられるタクシー | メーター・設備料 | 1名 | 特になし |
介護タクシー | 乗降に介護が必要な方のタクシー セダン・車椅子対応 |
メーター・設備料 ・介護料 |
1名 | ヘルパー2級 |
患者等搬送車 (福祉系) |
消防局の認定を受けた車両 車椅子又は寝台・資器材 |
寝台料金・設備料 ・付添料 |
1名 2名 |
適任証 |
患者等搬送車 (医療系) |
消防局の認定を受けた車両 寝台専用・資器材・医療資器材 |
寝台料金・設備料 ・付添料 |
2名 | 適任証・看護師 ・救命士 |
寝台タクシーや福祉タクシーは、タクシー会社が行う寝台又は車椅子が乗せられるタクシー。介護タクシーは、訪問介護事業所やタクシー会社が行うヘルパー2級以上の介護士の乗務員が乗降の介助を行うタクシーで、タクシー料金に加えて介護料が加算されます。事業所によっては、自宅での身体や排泄の介助・行き先での付添いなどが可能です。
患者搬送車は、所轄の消防より認定をうけた事業者が行う患者搬送事業で、患者搬送適任証を所持する2名の乗務員が病院からの転院や退院などを行います。この内、医療資器材を搭載し、医療処置継続の搬送が可能なものを当社では民間救急と呼んでいます。
ここでは、患者が寝た状態で搬送される事を想定して、寝台タクシーと民間救急を比較し、更に、消防救急と民間救急の違いを説明し、民間救急を理解していただきたいと思います。 加えて民間救急で行う各種サービスの内容をご説明致します。
民間救急は寝台タクシーではありません
寝台タクシー
寝台タクシーは、タクシー運転手さん1名の対応で、タクシーのメーター料金と車両設備料金や待機料金の加算で運行されています。運転手さんの資格などに決まりは無く、普通の運転手さんが車を乗り換えて乗務しています。
病院で患者様が寝台へ移乗するのは、病院スタッフに任せているようです。寝台車の規格は、車椅子との兼用車両がほとんどで、医療資器材の搭載は無く、搬送時の見守りや緊急時の応急手当も同行する家族に一任されます。
寝台タクシーは寝たまま乗れるタクシーで、それ以外の詳しい規定は各社まちまちなのが実情です。
民間救急
民間救急は、正確には所轄の消防局が認定した「患者等搬送事業」と呼ばれています。
民間救急は、消防局が認定する講習を修了し適任証を交付された者2名で乗務することが義務づけられています。
当社の職員は、看護師・救急救命士及び介護士で構成され、全員が適任証の交付を受けています。更に民間救急業界唯一の団体である「全民救」に加盟し、その民間救急乗務員講習(MAST講習)を受講し安全・安心・快適な搬送を実践しております。
民間救急の車両は消防局の患者等搬送車の認定をうけ、毎年更新の検査を受けています。当社の車両は、消防局が指定する資器材に加えて、医療搬送で必要になる資器材を追加で搭載している車両で運行されています。
料金は国土交通省の「寝台専用料金」に基づき、事業所を出庫して帰庫するまでの距離で算出され、車両設備料や看護師・介護員の付添料、搬送で使用する酸素等の消耗品の料金が加算されます。
患者等搬送事業認定証
適任証 ・ MAST資格証
搬送の様子
搬送に際して、患者様の情報は事前に頂き、病室お迎え時は、携帯酸素やパルスオキシメーター、点滴台など必要な医療資機材を準備して伺います。
医療スタッフから搬送に関する申し送りを受けた上で、ストレッチャーへの移乗は病院スタッフと協力して行います。 搬送中は、当社の看護師・介護士が付添います。医療処置継続の患者様の場合(酸素の投与や持続点滴など)、搬送元病院の指示に従い、流量の管理や様子観察、必要な介護を行います。
民間救急サービスとは
当社の民間救急サービスの具体的なサービス内容についてご説明致します。
転院の患者搬送
急性期を脱し、病状が固定し、転院が可能になった患者様の転院手段として民間救急をご利用いただいております。特に、療養のため転院するものの、酸素投与や点滴などの医療処置を継続しながら搬送する必要がある場合、搬送元病院と連携し、搬送に必要な患者様の情報を頂き、万全の準備をして搬送に臨んでおります。
転院搬送の様子
退院の患者搬送
転院の患者搬送と同様に搬送元病院と連携し、万全の準備をして退院の患者搬送に臨んでおります。
自宅へ帰られる場合は、患者様の状態に加えてご自宅の情報をご家族様に詳細にお伺い致します。
・形態 集合住宅 一軒家 救急車の駐車場所など
・状況 階段の有無 エレベーターの有無,・サイズ 寝室までの搬送経路など
ご自宅の状況に合わせ、必要があれば、以下のような準備を致します。
・ご自宅側に搬送技術員を追加で手配
・移動資器材(車椅子・布担架・スクープストレッチャー等)の手配
患者様を安楽に安全にベッドまで搬送致しております。
医療処置継続の患者様については、ご自宅到着時に、かかりつけ医の往診や訪問看護ステーションの担当看護師の立会いをお願いする事もあります。
在宅医療患者様の通院・病院からの一時帰宅
主にALS (筋萎縮性側索硬化症)で人工呼吸器を装着されている患者様が定期的に利用されています。医療機関・人工呼吸器センター・訪問看護ステーション・ご家族と連携を取り、 ご自宅の状況に合わせ、最も安全な方法を検討して搬送を 実施しております。
また、安全な搬送を実施するため、当社が所属する「全民救」の「ALS患者様の通院に関する搬送シュミレーション実習」を社員が 定期的に受講し、技術の向上を図っています。
「全民救」
医療搬送シュミレーションの様子
長距離の患者搬送
出先での事故による入院・・・ 故郷の親が寝たきりで長期入院中、心配で近くの病院で療養してほしい・・・
など患者様ご家族様のさまざまな理由により、安静度がベッド上(寝たきり)の方を長距離搬送することがあります。
長距離搬送は、全ての工程を民間救急車で搬送するだけではありません。場合によっては新幹線や航空機・船舶などの交通手段を使い、搬送元病院より搬送先病院まで当社の看護師が全工程を付添い搬送するケースもあります。
当社の位置する福岡県福岡市は、九州の玄関口として博多駅・福岡空港・博多港を要しています。
長距離の搬送では、当社が加盟している「全民救」のネットワークを活用することもできます。新幹線や航空機などを利用する際も、受入れ・送り出し共に万全の体制を整えておりますので安心してご依頼下さい。
新幹線の多目的室を利用した患者搬送
新幹線には個室(多目的室)が準備されており、所定の手続きを取れば患者様の搬送で使用することも可能です。
但し、公共交通機関ですので、伝染するおそれがある感染症の場合は利用できない場合もあります。
新幹線ホームで待機する当社搬送員
多目的室の手配をするには
まずJR各社に連絡を取り、多目的室の予約を取ります。医療処置継続の患者様は5日前より、医療処置が無く、安静に寝たままの搬送の患者様は2日前より予約が可能になります。JR各社の多目的室利用申込書に所定の事項を記入し、医師の診断書・同意書を添えて提出します。利用申込書には、医療処置の内容や医療器材についても記入が必要です。当社で手続きを代行することも可能ですので、その切は ご相談下さい。
ご利用に当っての留意すべき点
1 ご利用の新幹線は出発駅から到着駅まで直通である必要があります。
新幹線を途中駅で乗換えるのは、患者様の状態にもよりますが、困難だと思います。
2 多目的室の広さは、新幹線の種類により異なります。患者様が特殊な車椅子を利用する場合や大型
の医療機器を持ち込む必要がある場合は事前にスペースの確認が必要です。
また、室内の定員は患者様と付添い者の2名です。他の人員スペースはありません。
(700系の新幹線は従来の室内より広くなり、折りたたみの椅子を追加する場合もあるようです。)
3 多目的室に持ち込める医療資器材や準備できる設備等には、制約があります。
例えば、酸素ボンベは小型のもの2本まで、電源設備は○○Wまで・・・等。
患者様を安全に搬送するために必要な医療資器材を予めリストアップして付き合わせする必要があります。
4 始発駅・終着駅以外の停車駅の停車時間は短いところでは1分程度です。
到着駅事務所と事前に打合せ、安全に段取り良く時間内に完了できる配慮が必要です。
当社のサービス内容
当社の新幹線搬送は3名対応が基本になります。多目的室のベッドは側面が壁のため、反対面からの対応になり、頭部と脚部を搬送員が、酸素や点滴などのルートを看護師が担当し、患者様を寝たまま安全にホーム上の当社ストレッチャーまで移乗します。ホームから民間救急車までの移動は、JR各社と連携をとり、極力ストレッチャーで移動できる様お願いしています。エレベータ設備等の制約で難しい場合は、一時的にリクライニング車椅子やスクープストレッチャーを使用し、患者様の負担を最小限に抑える方法で工夫しています。
尚、医療継続の処置が無く、車椅子での移動が可能な方は、当社の介護タクシーをご利用下さい。
新幹線を利用した患者搬送の際は、経験豊富な当社に是非ご相談下さい。
飛行機のストレッチャーを利用した患者搬送
航空機は要望により、客席上に寝台(ストレッチャー)を 準備することが出来ます。
所定の手続きを取れば、患者様の搬送で使用することも可能です。
但し、公共交通機関ですので、伝染するおそれがある感染症の場合は利用できない場合もあります。
また、飛行機の特性上、機内の気圧や酸素濃度が変動します。
心臓や呼吸器及び脳血管の疾病がある患者様は主医師と十分協議のうえ慎重に利用を検討して下さい。
滑走路で待機する当社の民間救急車
航空機での患者搬送を手配するには
まず航空会社の相談窓口へ連絡を取ります。ストレッチャーの手配が必要な患者様は、国内線の場合は48時間前までに、国際線の場合は72時間前までに、医師の診断書・同意書を提出し、使用する医療機器の確認を完了しなければなりません。
当社で手続きを代行することも可能ですので、その切はご相談下さい。
日本航空グループの相談窓口 | JALプライオリティ・ゲストサポート |
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全日空グループの相談窓口 | ANAスカイアシスト |
1 航空機の機種によっては、ストレッチャーを準備出来ないものもあります。
事前確認と早めの手配をお勧めいたします。
2 ご利用の航空機は出発空港から到着空港まで直通である必要があります。
飛行機を途中空港で乗換えるのは、患者様の状態にもよりますが、困難だと思います。
3 機内ストレッチャーから民間救急車までの移動に関して、航空会社スタッフのみで可能か?
民間救急スタッフの機内乗込みが必要か?主治医・ご家族・民間救急事業者で協議のうえ決定して下さい。
当社のサービス内容
当社の航空機搬送は機内搬送の場合は3名対応が基本になります。
患者様の移動を最小限に、左右よりスクープストレッチャーを挟込み、頭部と脚部を搬送員が、酸素や点滴などのルートを看護師が担当し、必要に応じて航空会社スタッフに介助してもらい、航空機出口で待機している当社ストレッチャーまで移動します。
スクープストレッチャーは座席ヘッドレスト上に設置するため、客席を抜けるまで、地上高約140cmを保って移動しなければなりません。事前に患者様の客席と出口を確認し、搬送ルートを決め、慎重に安全に行います。
航空機から当社の民間救急車に乗込む様子
航空機出口からは、ゴンドラ設備でストレッチャーのまま滑走路上で待機している当社の民間救急車まで移動し、患者様を収容後適切な受入対応をした後、搬送先病院に向けて出発します。
機内から空港出口まで航空会社スタッフで行う場合は、当社搬送員は出口付近でネームプレートを提示して待機します。患者様の状態によっては、予め航空会社と連携して救護室の準備をお願いし、誘導します。救護室では、排泄介助などの必要な対処をした後、当社ストレッチャーや車椅子へ移乗し、民間救急車へ誘導します。 尚、医療継続の処置が無く、車椅子での移動が可能な方は、当社の介護タクシーをご利用下さい。
飛行機を利用した患者搬送の際は、経験豊富な当社に是非ご相談下さい。
船舶を利用した患者搬送
当社の位置する福岡市は博多港を要しており、壱岐・対馬・五島列島へのフェリー航路や韓国釜山への国際フェリーが就航しています。福岡市内の病院より壱岐・対馬・五島列島の病院へ転院搬送を依頼される事も度々あります。
国際フェリーターミナルより客船を臨む